ＥＳ（従業員満足度）・エンゲージメント向上の企業事例⑧ファリィー

ふぇありぃ保育園のＥＳ改善事例

今回も弊社が支援したＥＳ改善の企業事例をご紹介したいと思います。今回ご紹介する株式会社フェアリィー様（以下ふぇありぃ保育園）は、埼玉県内で6拠点の保育園を運営しており、『働くママの為に負担を少しでも減らせたら』をコンセプトに、保護者のサポートや貢献に重きを置き、現在の社会において喫緊の課題となっている少子高齢化対策の1つである保育サポートを展開しています。

弊社のＥＳの書籍購読がきっかけとなり、弊社が支援し2015年から年1回の頻度でＥＳ調査を実施しながらＥＳの改善活動を展開しています。先月に2回目となるＥＳ診断が終わり、つい先日ＥＳ診断結果の報告を行ったばかりのふぇありぃ保育園の取り組み事例をご紹介させて頂きます（以下は株式会社フェアリィーの玉居子社長からの取材内容です）。

―ＥＳ調査実施を意思決定した背景は何だったのでしょうか？

昨今、あらゆる産業で人手不足が加速していますが、当保育園業界も御多分にもれず、人手不足が深刻な業界の1つとなっており、ここの部分が業界全体の経営課題になっています。

当社でも課題視していたこの人手不足の経営課題を改善していくためには、保育園で働く保育士さんたちのＥＳを向上させていかなければならないのではないかと考えていたところ、志田さんのＥＳに関する著書を拝読したことがきっかけとなり、ＥＳ診断を依頼する運びとなりました。

―ＥＳ調査の結果を確認した、率直な感想はどうだったでしょうか？

当初は本当に園の職員が本音を書いてくれるのか心配していましたが、ＥＳ調査結果を確認すると、ヒューマンブレークスルー社の特長である、社員の生声である本音がフリーコメントの項目ごとにしっかりと確認でき、把握していなかった、または普段社長には話してくれない職員の本音なども分かり、ＥＳ向上に向け必要な課題をはっきりと掴むことができました。

また、課題ばかりではなく、当社の強みも理解することができました。それはＥＳ診断項目にある「コミュニケーション」という大項目の満足度(スコア:3.68)、および重要度(スコア:4.15)の両スコアがとても高く、「スタッフ同士のコミュニケーションや関係が良好なので、とても働きやすい環境だ」といったフリーコメントもたくさん寄せられました。これは当社ならではの素晴らしい特長だという指摘が志田さんからもあり、働く社員から見た当園のストロングポイントを改めて確認することができました。

―ＥＳ調査後の改善活動はどのように取り組まれましたか？

2015年12月に報告を受けた第1回ＥＳ診断での大きな課題が「上司のマネジメント」、「人事評価」、「職場環境」、「労働条件」でしたので、この4項目を重点課題として捉え必要な改善活動を実施してきました。

「上司のマネジメント」については、トップ層の職員に対する接し方の部分で改善すべき内容があったため、相応しい行動特性を発揮すべくトップ層の自己変革に取り組みました。その結果先日の第2回ＥＳ診断では、この「上司のマネジメント」の満足度スコアが0.65ポイントも向上しており、ヒューマンブレークスルー社からもこのような大幅な改善は過去例がないと言われたほど、ドラスティックに変化させることができました。「人事評価」の部分については、明確な賃金体系を整備したり、実際に給与面ではベースアップも行なった結果、第2回ＥＳ診断では満足度スコアが0.09ポイント向上していました。人事評価についてはまだまだ改善すべき部分もあり、改善活動を継続していきたいと考えています。

「職場環境」については、保育園内のハード面についての課題がありましたので、ＰＣの入れ替えを行うなど設備・什器・備品面でできるところから打ち手を講じた結果、第2回ＥＳ診断では満足度スコアが0.21ポイントと大幅に向上しました。「労働条件」については、休日取得に関する体制の強化と人員確保に向けさまざまな対策を講じた結果、第2回ＥＳ診断では満足度スコアが0.20ポイントと大幅に向上しました。「職場環境」と「労働条件」も引き続き継続的な改善を推進していきたいと考えています。

―2回目のＥＳ調査の結果から分かる、会社が変化した点は、どんなことでしたか？

第2回のＥＳ診断の結果では、総合満足度では第1回の結果と比較し、0.10ポイント改善しており、全10項目では2/3以上となる7項目で満足度スコアが向上しました。特に先ほどお話した重点課題だった4項目でスコアが向上したこともあり、第1回の診断後に講じた打ち手は、ある程度有効性があったと認識することができました。また第2回のＥＳ診断では、ヒューマンブレークスルー社からの提案で、「前回のＥＳ診断から会社が変わったことは何か？」「当社の強みや誇れるものは何か？」といったフリーコメントのみの設問を設計してもらいました。

「前回のＥＳ診断から会社が変わったこと」の集計結果では、1位が「トップ層が変革されている」、2位が「働きやすい職場環境になった」といった回答結果となっており、人手不足を解消していくための職場環境の整備は、ＥＳ診断後の改善で1つ前進させることができたと捉えています。

社員から見た会社の強みや誇れるもの

また「当社の強みや誇れるものは何か？」という設問の結果は上記のような内容となっており、「保護者への貢献度が高い」が第1位、「スタッフ間の連携の良さ」が2位となっており、今後は会社の強みをさらに伸ばしていくためにはどうすればいいか？といった視点からも有効な改善活動につなげ、継続的な取り組みを行っていきたいと考えています（取材内容はここまで）。

新卒者の1年未満の離職率が非常に高い業界の中、ふぇありぃ保育園はこのＥＳの取り組みで人材の定着率が大幅に向上し、新卒者の離職も0％となりました。「人」の部分が競争優位性になりつつあり、来年は新規で2拠点の拡大戦略を考えています。今の経営課題は資金繰りではなく、‘人繰り’です。ＥＳへの具体的な取り組みにつなげ、ふぇありぃ保育園のように経営課題の改善につなげていただきたいものです。

（2016年12月号帝国データバンク発行「帝国ニュース」での弊社代表志田貴史の執筆記事より）